壁と卵――非常に抽象的でなぜか親しみやすい、世界的な作家の手腕

人気作家の村上春樹さん。日本国内だけでなく、今、世界的に小説を読まれる日本人作家のひとりです。小説だけでなく、アメリカ文学の翻訳でも活躍しており、多くの熱狂的なファンから支持を集めています。そんな村上春樹さんの名言をご紹介します。

非常に抽象的で、なぜか親しみやすい。これが世界的な作家の手腕か?

――高く堅固な壁と卵があって、 卵は壁にぶつかり割れる。 そんな時に私は常に卵の側に立つ。

これは、イスラエルの文学賞である「エルサレム賞」を受賞した際のスピーチでの発言です。村上さんが作品中でも得意とするような非常に抽象的な暗喩ですが、それらと比べるとやや解釈がしやすい言葉だといえるでしょう。"高く堅固な壁"は、圧倒的に強い存在をイメージさせます。それに対して、"卵"は小さくて壊れやすい存在です。言葉の通り、卵は壁にぶつかればすぐに割れてしまいます。そんな時、村上さんは卵の側に立つ、つまり味方してくれるとか、あるいは村上さん自身が卵である、ということでしょうか。世の中では常に、強い者や、声の大きい者、つまり壁のような人たちがのさばります。しかし、村上さんは卵の側に立とう、卵の声を聞こう、とするのです。そんな姿勢が多くの共感をさそい、世界的な作家、村上春樹の人気を支えているのかもしれません。

"個性"のひとつのあり方を示してくれる道しるべのような名言

――生きている限り個性は誰にでもある。それが表から見えやすい人と、見えにくい人がいるだけだよ。

これは、『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』の作中の言葉です。昨今、"個性"という言葉を取り巻く風潮はとても複雑なものになっています。新卒の就職活動をはじめとして、面接で他の学生より抜きんでる"個性的"な存在であれとうたいながらも、実質的には会社の指針への絶対服従や協調性といった"没個性"を求められる、矛盾した状況。一体、"個性"とはほんとうのところどんなものだろう、と若者は常に迷っているのです。そんな時、この言葉は道しるべのように、"個性"のひとつのあり方を示してくれます。自分が得意としない"個性"のあり方を押しつけられたとき、思い出したい名言です。

たいていの場合、望まない通りの結果になる

――悪い予感というのは、良い予感よりずっと高い確率で的中する。

これは『1Q84』の作中の言葉です。この部分だけ抜き出してみると、シリアスでありながら、どことなく「マーフィーの法則」を彷彿とさせるユーモアがにじみ出てくるようでもあります。マーフィーの法則とは、"落としたトーストがバターを塗った面を下にして着地する確率は、カーペットの値段に比例する"を代表とした経験則による理論です。「まさかこうなって欲しくないな」という予感は、たいていの場合、望まない通りの結果になります。現実とはそんな厳しいものですが、このような名言を心のどこかに置いておけば、いざという時に「ほら、やっぱりな……」とほんの少しだけショックを緩和することができるかもしれません。

今回は村上春樹さんの名言をご紹介しました。世界中で読まれている作家、村上春樹さんの名言を参考に、人生がより豊かになるといいですね。