ワーストはネクストのマザー

外資系の会社が増えたこともあるでしょうけれど、何でもない言葉を英語風にして有難がるという風潮があります。英語として通ずるものならともかく、しばしば外国人には通用しない用法が用いられています。「和製英語」として使われているのであればまだマシなのですが、使っている本人が「英語を話している」つもりになっているのには、辟易させられることもあるでしょう。

しかし、長嶋茂雄さん語る「英語」はどんな言葉であっても、嫌味がありません。言葉には、「どんな意味があるか」ということだけでなく、「誰が語ったか」にも意味があるのでしょう。

ワーストはネクストのマザー ~長嶋茂雄

どん底のときでも、最悪の結果をむかえてしまったときでも、やがてはその経験が次の飛躍のための糧になるという意味でしょう。英単語を3つ使い、日本語は「は」と「の」しかない発言ですが、これ以上ないといえるほど、みごとな組み合わせではないでしょうか。

長嶋茂雄さんの発言はしばしばメディアに取り上げられますが、「名言」「迷言」といわれているセリフの中には、本人が語ったものではないものも含まれているようです。実際に長嶋さんが語った言葉でなかったとしても、長嶋さんが語ったということで価値が生まれる言葉があるからこそなのかもしれません。

サバは魚へんにブルー ~長嶋茂雄

長嶋さんの迷言には、魅力あふれるユニークなものたくさんあります。「サバという字はどう書くのでしたっけ?」と長嶋さんに聞かれた人が、「鯖」と書いてみせると、「ああ、そうでした、そうでした、魚へんにブルーですね」と納得されました。言われた人は、「ブルーではなく靑と書くのです」とは言えなかったそうです。

「昨晩は午前2時に寝て5時に起きました。でも、5時間も寝れば十分です」と記者に語ったそうですが、つっこみのプロである新聞記者も、長嶋さん相手には「2時から5時なら、3時間ですけど?」とは指摘できなかったのだとか。長嶋さん的には、「5時に起きれば常に5時間寝たことになる」という強靭な体力をお持ちなのかも知れません。ポジティブ思考の人なので、「3時間」を「5時間」と勘違いして「十分眠れた」と思い込める能力があるのかも知れません。

60才になられた時の感想としては、「初めての還暦、ましてや今年は年男ということで…」という発言もありました。「初めての還暦」と語る長嶋さんとしては、「二度目の還暦」「三度目の還暦」というものがあると考えているのでしょうか? 還暦は誰でも必ず「年男」の年になるものなので、「ましてや」という接続詞には意味がないこともご存じないのかも知れません。

言葉に人格が乗り移ると、言葉そのものの持つ以上の意味が発揮されるのかも知れません。どんなときにもポジティブに生き続ける人だけに、おのずと言葉が明るい意味をもつのでしょうか。「失敗は成功の母」というよりも、「ワーストはネクストのマザー」の方が、心に響く言葉のように感じられます。