これぞ経営者の鑑というべき最後の絶叫

世間を騒がせる不祥事が起きるたびにカメラの前に姿を現す企業の経営陣。しかし、彼らの謝罪会見はともすれば「釈明会見」であり「免罪符」を得るための形式的なものになりがちです。謝るところを見せておかねばという感じで。

そんな中で、当時の日本でも珍しい非常に潔い態度で会見に臨んだ一人の社長がいました。彼の言葉は後世に長く語り継がれるものとなりつつあります。

すべては社長である私の責任という姿勢

「社員は悪くありませんから」野澤正平(経営者・元山一証券社長)

時は1997年、バブルが弾けてから日本経済が低迷混迷に陥っている時代で、都市銀行である北海道拓殖銀行の破たんというショッキングな出来事が発生した時期でした。
野村証券などと並んで日本を代表する大手証券会社である山一証券にも終焉が迫っていました。

そして、正式に山一証券を終わらせる決定を下した後の記者会見の席上、野澤はマイクを握る手に力を込め、紅潮した顔面をくしゃくしゃにしながら号泣とともに絶叫するかのような声でいったのでした。
「社員は悪くありませんから」

責任というものの重みを見せつけた記者会見

「みんな私らが悪いんであって」という経営責任、会社を任されたトップとしての責任を明確に言葉にし、「社員は悪くありませんから」と下に責任を押し付けない潔い姿勢を見せました。
さらに、これから失業者となる多くの社員の行く末を案じ、会見場の記者たちを通じ全国に向けて社員を応援してやってくださいと頭を下げました。

ビジネスライクな海外から見れば、「何いってるのか意味がわからない」「単に経営に失敗しただけ」という感じだったかも知れません。また、安易な自己責任論を好む人たちにすれば「社員だって自分で選んだ会社なんだから自業自得」なのかも。さらに、失敗は部下のせいであり成功は自分の手柄だという少なくない経営者にとっては「ふざけんな」という会見だったでしょう。いや、耳が痛かったかも知れませんね。

ともあれ、普段滅多に見ることができない新鮮な光景だったからこそ、いまも多くの人の記憶に残る名会見となっているのです。 会社を、組織を率いるということの責任を改めて知らしめてくれた名言です。

他人事で終わらせてはいけない

さて、あの当時と比べて現在は少しくらい良くなっているでしょうか。経営の失敗を率直に認め、従業員の暮らしを心配する経営陣は増えたでしょうか。そうであるなら良いのですが。

おそらく、この名言が事あるごとに思い出されているうちは、状況は変わっていないと判断しても間違いではないでしょう。他人事として見ている分には素晴らしいけど、自分の身に置き換えるとどうなのか。そこも考えさせられる名言です。